二回目は「司馬作品の分類」
@戦国物
一回目に挙げた『
国盗り物語』以下『新史太閤記』『関が原』『城塞』『夏草の賦』『尻啖え孫市』『梟の城』『
風神の門』『戦雲の夢』『播磨灘物語』『功名が辻』『覇王の家』など。
この戦国時代は
中国の春秋戦国時代と比肩されるほどの
農業勃興期であった。
農業生産力が飛躍的に上がった時代だ。
この時代の作品のおもしろさは戦国の世を統一しようという男たちの力のぶつかり合い、そして権謀術数だ。
応仁の乱に始まるといわれる戦国時代。
初期の英雄は『
箱根の坂』の北条早雲だ。
そして戦国の世を完全に終わらせたのが江戸幕府の開祖、
徳川家康だ。
戦国の群雄たちの事跡を追って行くのが無上に楽しい。
司馬作品を読めばそれらの群雄を有名、無名をこえて把握する事ができよう。
『箱根の坂』の北条早雲、
『国盗り物語』の斉藤道三、
織田信長。
『新史太閤記』の
豊臣秀吉。
『城塞』『覇王の家』の徳川家康。
『馬上少年過ぐ』の伊達政宗。
『夏草の賦』の長曾我部元親。
『功名が辻』の山内一豊。
『播磨灘物語』の黒田官兵衛。
『尻啖え孫市』の雑賀孫市。
『関が原』の石田三成。
何にも勝る戦国
教科書だ。
もちろん武士が中心であるのだが、この当時江戸時代以後言われた主君に対する忠義というものは薄く、自家の保全、保身、勝つ方につくという論理が当然のように時代を支配していたのだと感じさせられる。
より人間らしく当時の武将を感じることができる。
ただ例外としては石田三成であろうか。
秀吉の恩を感じることが深かった。
正義を好みそれに殉じていく生き方だ。
また彼との友情で西軍に加担した、大谷吉継も記憶されていいだろう。
日本での友情と呼べるもののはしりではないかという。
うまく戦国の世の中を渡って徳川大名に落ち着いたものとして、藤堂高虎がいる。
山内一豊もそうであろう。よく秀吉の恩義があり徳川に寝返りをしたと思われがちだが、誰でも自分の家、家族が大事なのは今も昔も変わりはしない。
勝つ方につくのは当然だし、恩賞をたくさんくれる方につくのもこれまたごく自然といえる。
そのあたりの時代の気分というものを司馬作品では感じることができる。
要するに弱肉強食の世の中である。
しかしまた、そういう世の中であればこそ、義によって滅んだ石田三成や大谷吉継、宇喜田秀家、真田幸村、長曾我部盛親などの武将の美しさが際立つのである。
鎌倉武士の伝統である、「名こそ惜しけれ」というものが底流にあるのだろうか。
要するにこの一連の戦国物には農業勃興にともなう社会の元気のよさを背景に多種多様な個性あふれる群雄たちの戦国生残りを賭けた
チャンピオン決定戦であった。
だからこれらの作品から受ける印象は総じて明るいのである。
日本を統一しようという野心、野望の物語なのだ。